この種のトピックは東南アジアでは場所を問わず定期的に表面化するので、さして驚きも感じやしないが、腹立たしいのと同時に不安な気持ちにさせられる。
最近、またタイの英字メディア上に偽果汁ジュース屋についての記事が載ったので、改めて注意喚起の意味を兼ねて挙げてみたい。

タイ国内各地で随所にみられる生搾りらしきミカンジュースだが、一般的な業態では大きく分けて2種ある。現場で手作りされるものと、既に容器詰めされた出来合い物とがある。

確かナムソムカンとか言われる、小さな軟質プラスティックのボトルに入れられて売られるミカンジュースや、他にレモン、またはザクロジュース等が有る。
大概、砕氷が詰まったスチロール箱内で程よく冷やされて、バンコクの街角や大小様々な市場等でよく目にする。

価格帯は一本あたり概ね10から30バーツの範囲内で、庶民的で手軽な水分補給の便利アイテムだろう。
特に都市交通機関を忙しく乗降し、終日移動を繰り返す大都会バンコクの都市型生活を営む上では非常に便利。
鉄道駅付近や主要交差点付近の動線上によく展開している。
目につき次第、サッと買ってその場でサクッと飲んでパッと容器を捨ててゴー。
灼熱のアスファルト地獄で活動するなか、爽やかな酸味と冷たい果実の風味に毎回生き返る想い。
当然、私も良く利用するが、同時にこれがかなりの曲者なのは以前から知っていた。

衆人環視の中、その場で物理的にミカンを絞り出すのなら特に心配はしないが。。冷えてはいないが美味そうだな。。。

これらの移動式、路上販売者の幾つかは以前から意図的な品質詐称や欺瞞行為がとりだたされ、時折、摘発もされている。
水道水に濃縮果汁を混ぜる手口や、香料や怪しいシロップを添加した物、飲用に適さない水や氷の転用、重金属を含むような着色料、サッカリン等の合成甘味料の添加等、耳にしただけで怖い事例が報告されている。
通常、商品に内容物に関する表示は特にないが、殆どの店はそれが100%フレッシュであるかのような暗示がされているのは言うまでもない。

当局も手をこまねいているわけではなく、抜き打ち成分検査などで対応しているが、屈指の屋台食文化を誇るタイでは、その全てを網羅するには充分ではない。
少し前に不法移民のベトナム人が水道水に何やら怪しいシロップを混ぜて小瓶に注ぎ込んでいる画像が出回って騒ぎになったのも記憶に新しい。

その場での注文生産方式なら多少は安心なのだが、それでも使用される水や氷、容器類にも注意を向けよう!ボトルウオーターなら安心だが、大抵は廉価な大型容器の飲用水が使われていて、その出所の判別は消費者からは難しい。

改めて想い返してみると、今迄に飲み干した物の中には妙に甘いヤツや、不自然な風味のモノに遭遇した記憶が何度かある。
考えてみると不安になるが、幸いなことに特に具合が悪くなったことは無いな。

同時に非の打ち所のない現場絞りの100%、氷すらも無添加のフレッシュジュースの新鮮な味に少し驚いた記憶もある。
本物中の本物があの味なら、他のいつも飲んでいる大丈夫そうな奴は、一体、何なのだろうと疑問に思った記憶もある。
気をつけろと言ったって、消費者サイドから真贋を判別するのは限りなく難しい。

品質を判別する上では、価格も重要なヒントになる。事の性質から言えば、真正物には価格差があって当然な筈。画像は割増料金で作ってもらう手搾り無添加果汁。。時々、種やパルプが混じるが、それがかえって安心につながり、愛嬌もあり、そして文句なく旨い!

タイの消費者団体からの談話が同時に載っている。
飲料大手のメーカーで生産され小売店舗で販売されるものと違い、インフォーマル・セクターの個人零細業者で生産され売られる物に対して、品質管理や表示規則に関連する法整備は充分に行われていないのは、当局も認識しているという。

しかし、低所得者層向けに非正規に売られるそれらの食品群に対して、一律に品質検査、内容表示義務などを課すのは現実的ではなく、課したとしても価格に反映されてしまい、その存在価値を相殺してしまうだろうと。
いわばビッグなプロデューサーには適用される関連法も、路上カートや自転車・バイク屋台などの個人零細店には無効力。

元々、それら販売者は、存在自体が曖昧で、主として移動販売で把握も難しいいわゆるグレーゾーン稼業だ。
しかも、営業時間も一定せず、一度Ready to Goで売ってしまえばその時点で取引も終了。
生産者、生産物、販売の責任や義務なども、その時点で跡形も無く霧散する。
そして全ては利用者の自己責任と相成る。

かと言い、健康被害が出るのでは本末転倒なので認可登録制導入や、ウオッチドックの様な検査体制確立等、何らかの対応は議論されているようだ。

使用される具材の可視化は心強いが、街の外気に曝される露店である以上、衛生上の懸念が付いて回る。

同時に販売者側も、幾度となく表面化する品質問題によって生じる消費者心理の不安の広がりを懸念する声も多く、販売者サイドの相互監視などの案も挙がっているという。

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結局は最終消費者が不確かな販売者、商品を購入するリスクを認識しながら、販売者のモラルと自助努力に期待する他ないと結んでいる。

唯一の防衛策は、手っ取り早く馴染みを見つけて、それにしがみ付くこと事くらいか。 画像は私の馴染みの一つ、ジョムティエン・ウイークエンドマーケットの生ジュース屋

何らかの統括組織の元で営業している観光市場などを除き、大概の単体移動式屋台などでは、無口な親父がしばし無言でやっていることが多い。
しかし、それにめげずに話しかけて相手の出自くらい確認するのも手かもしれない。
そうすれば周辺国から身一つでタイに潜り込んで、勝手に怪しい商売をしている文字通りのモグリ野郎ぐらいは判別できるかもしれない。
利用するなとは言わないが、使うなら充分に吟味しながら注意して欲しい。