パタヤの現在 緊急指令 至急微笑みの国を脱出せよ その2より続き

国家非常事態宣言、外出禁止令、外国人への入国禁止措置等。。
愛し慣れ親しんだタイ王国だが次に来れるのはいつになるか全く不透明。
それを考えた途端、腹を満たした後、急に別のものも満たしたくなってきた。
我ながら現金なものだと感じなかったと言えば嘘になるが。。

最後の自由な夜間の外出を愉しむ為か? ここ数日よりも多い人の出だった。

国家非常事態宣言発布前夜だが、私個人の下*身における非常事態宣言はとっくに発令されているのでこっちの方も対処すべく、手軽な選択肢が並ぶビーチロードに足を向ける。。
なんだ! 結構、居るじゃんか? 国家は非常事態寸前と言っているが、彼ら自身も非常事態なのであろう。。
文字通り、雨が降ろうが槍が降ろうがなんとやら。。
例え戦争中にも人はこの営みを欠かさないのは人類の歴史の中を見ても明らか。

(この部分の記述は主題から外れるので割愛させてもらう)

翌日のブッカオ常設市場。遂にすべてのテーブルが撤去されて。。食料の安定供給の観点から市場自体の閉鎖は無いだろうと言われているが。。

最後の夜をそつなく消化し清々しく晴れ渡った空の下、脱出失敗のシナリオも描きながらパタヤ最後の朝を過ごす。
それは出国準備済ませながら、同時にパタヤ籠城の心積もりを固めつつ、惜しむように最後の瞬間までパタヤを愉しもうとする様な奇妙な経験だった。

人の居ないパタヤビーチは、今回が最初で最後の光景だろう。後片づけ作業をしているビーチボーイの姿が虚しい

思うのだが、、いつかこの全てが終わり晴れてこの地に戻った時に、観光地としてのパタヤは存在しているか少し不安になる。。
目に不安を宿しながら、力なく微笑むタイの人達を想うと気の毒で仕方ないが、先進国の人間にとっても、経済崩壊への恐怖は同じで明日は我が身。。

重要の急増を受け大量に入荷したアルコールジェル。500gバリューパックから特大ガロン缶まであるが事態が急展開。まもなく購買ターゲット層の多くが出国して消えて居なくなる。

あらゆる娯楽がとりあげられてなす術がないファラン達。有るのは時間と食べ物だけ。それでは心身に悪いと思ってなのか? いつも以上にビーチを力なく歩く人々の姿が見受けられる

人の姿が絶えたソイ6。兵どもの夢の跡か。。

辛うじて営業してはいるビーチの老舗マイクデパートもこの通り。。

一つ良いことがあるとすれば、、前代未聞の買い物のチャンスだが。。この安値攻勢も虚しく、客も需要もこの後すぐ消え失せてしまう。ひょっとしたら多くの店自体がこれで最後かもしれない

国家非常事態宣言発令まで10時間余り。。。施行される制限の数々は外国人の我々には空恐ろしい物ばかり。。Thaiger より引用

現在、パタヤに居る外国人は2種類に分類できる。出る人と残る人だ。果たして私はどちらになるのだろうか? 彼らは腹を決めて残るようだ。明日には殆ど全ての国際線が運航を停止し、今夜には空港への移動もままならなくなる。出るならあんな悠長に飯なんか喰ってられない。さっさと行けるうちに空港に向かわなければ。。

昨日は無人だったバルバスの待合室は最後の出国チャンスに望みをかける人々で混んでいた

そして事後処理を全て済ませ、何とか空港行のバスに乗り込む。
政府の発した移動制限の為、午後5時パタヤ発の私のバスが本日最後の運航になる様な話を耳にした。
文字通りのギリギリのセーフか。。
なんだかその昔、本で読んだサイゴン陥落直前の最後の脱出行のストーリーに似ていなくもない展開。
今回の敵は、音や姿も無く忍び寄り、目に見えないのでかなり手強い。。

空港に向かう途中の車窓から見た夕陽は、この後にこの国に降りかかるであろう多大な困難を暗示している様な不穏な落日の色を帯びていた

親愛なるタイ王国よ! 何とかこの国難を乗り越えて欲しい。そして出来るだけ遠くない将来に再度、微笑みで私を迎えて欲しい

既に運航便数の激減しているスワンナプーム空港。外出禁止令が出れば、更なる運航停止は不可避。刻々とタイムリミットが迫る中、次々に舞い降りてくる航空機が見えた

移動制限発令直前に空港に到着。今のところ三たびの運航停止の連絡は無いが、依然として安心はしていない。

何度も繰り返して来た、この国を去る時に感じる虚脱感を伴った悲しい気持ち。今回はいつになく重い絶望感みたいなものがそれに重なる

出発ターミナルに入ると、、テレビで見ていた先日までの閑散さは消え失せている。
むしろ、雑然としていて混雑している。
現場の雰囲気は、空港出発階に通常宿る高揚感はではなく、緊張感と不安、それに切迫感や緊迫感が漂っている。
飛沫感染を恐れているのか? 口を開いている人も少ない。

これを見れば不安にもなるよな。。早い便は半分近く、遅い便は9割がたキャンセルされている。最低でもお金を返してくれと想っても、関連業務も電話回線もセールスオフィスも、実質、既にパンクしている 泣

既に運航停止している会社のカウンターには当然人影はなく、運航停止になった2枚の航空券を保持している私には途方に暮れる他、為す術はない。

当初は甘く見ていてマスクを着用していなかった西洋人達も、今では着用率は100%近い。そりゃあそうだ、今じゃ彼らの母国が感染の中心地。まさにケツに火が付いた状態

余裕をとり夜間の外出禁止発令時刻にも抵触しないであろう時刻に、パタヤを出発したので出発の6時間程前に空港到着。
それなら昨日に運航停止してしまった私のタイ国際航空642便の事後処理でもと想い、セールスデパートメントに向かってみるが。。

一目でトライする気も失せるほどの大混雑。。こんなのに頭を突っ込んだら、折角、捕った3つ目のフライトをも逃してしまうだろう。。ダメだ!この件は後にしよう

これが出るなら後で払い戻し手続きも出来るだろう。。但し、破綻しなければ。。国営の航空会社が破綻するのなら、恐らく手持ちのもう一つのキャンセル便航空券、LCCスクートの方も逝ってしまうだろう。止めてくれ!大損だよ!

代わって空港地上階の東端にある24時間職員向け廉価食堂マジック・フードコートに向かう。

此処は知っておいて損はない。市中のローカルフードコートと同程度の価格品質水準で、ドンムアン空港にも同様のものがある。両施設ともに外国人にも気軽に利用できるので、断然お薦め。

時間つぶしを兼ねた腹ごしらえをしている最中にも、何度も運行情報に目をやる。。
大丈夫だ!変化はない。。まだ飛ぶようだ。
それでも実際のチェックインまでは安心できないな。。
そして僅か半時間後にチェックインカウンターに戻ると、既にカウンター受付は始まっていて、レガシーキャリアでは見たことも無いような長蛇の列が出来ている。

列の長さとカウンター職員の数を見ると、LCC以上の余裕の2時間以上の待ち。
それもその筈、欧州帰国の手段を失くしたヨーロッパ地域の市民達が、比較的運航を継続している日本を経由して何とか帰国しようと押し寄せているようだ。
昨日の当便予約時には4割がた有った残席が、先程には0になっていた。
過去24時間で、さぞかし熾烈な残席奪い合いが起きていたのだろうと推測する。

ヒンヅー教に伝わる神話の一つで、天地創造の様を表す乳海攪拌。スワンナプーム空港にある有名なモニュメントに達する頃にはやっと安心できるようになってきた。

行列には、同じく全日空の時間的に一つ前の同ルートの搭乗客達も混在していると見え、出発時刻が迫った彼らは職員たちによって列から抽出されて手早く処理されていく。
訊くとその便も満席なようだ。
そうか、やはり俺のは最終運航便なのか。。

昨日夕方、自身のタイ国際航空による出国便搭乗まで30時間を着る頃、偶然通りかかった同社のチケッティングオフィスに人が集まって居るのを目撃。駆け寄ってみるも、依然として私の搭乗便はGOの表示。。貴方ならどうする?

何たる僥倖! 偶然ビーチロードのあの場所をあの時に通らなかったら。
今頃は、帰国難民の仲間入りだった筈。
立ち往生するにはベストな国ではあるが、外出禁止令や移動制限下ではそれも心許ない。
そうなれば帰国の望みは政府機関の援助以外には望めない。
それには後から漏れなく、安部さんからの高額な請求書が届くと言う話らしい。。
それは慣れた私のような修行僧には悪夢以外の何物でもない。

出国済み制限エリアに居る人たちは、無事に残席を確保し出国を許された幸運な人達。此処まで来れば免税店で買い物を楽しむ余裕も生まれるってものだろう

大分、待たされたとは言え無事チェックイン、出国審査を終えてやっと安堵する。。
どうやら無事に帰れるらしい。。
依然として成田での拘束か、隔離の不安は拭いきれないが。。
現時点では、私はそれに懐疑的だ。

この時点では人種を問わず、流石にマスク着用率は100%になっている。。

全くこの世界全体、いや人類全体を巻き込んだドサまわりの責任は誰がとるのだ?
某国共産党指導部よ? まだ、何か言うことはないのか?
この時点で出発まで2時間以上あり、、ゲート前にて時間つぶしに当記事の執筆に没頭しているといきなり空港職員らしき人に肩を叩かれ。。

今度は出発ゲートの変更だと言う。。これは珍しい事では無く、同時にこれが中々な曲者だ。出発まで時間があるのを良いことに離れた場所で寝入ってしまったり、状況への注意を怠るとチェックイン、出国審査後に搭乗便を乗り過ごすことになる。チェックイン後に乗りそびれると原則、買い直しになることが多く、大損は避けられない。過去に知人がNYから遥々、アジアに渡る途中、最後の経由地で寝入ってしまい搭乗便を乗り過ごした。この間抜けな知人は搭乗便ゲート付近で寝ればよいものを、まったく離れた別の場所で寝入ったのが事の要因だった。アメリカ大陸、太平洋と立て続けに横断してきて疲れ切っていたのは判るが、詰めが甘く、最後のレッグで痛い目に遭ったのだ

なんだ、、この場に及んでもまた変更か!
今回は油断も何もなく、気が休まる時がない旅だな! まったくコロナめ!

再指定のゲート前に移動。。ようやく最終搭乗手続きを終えて無事に機内の人になる。

此処まで来ればもう私個人に出来ることはない。あとは黙って乗っているだけだ

そして日付が変わり3月26日、時刻00:30に搭乗便は無事にスワンナプーム空港を離陸し、一路、5000km彼方の我が祖国へ。
既にタイ国内では外出制限、国家非常事態宣言は発令されているだろう。
表向きは民政だが、現政権のルーツは偽りのない軍事政権。
タイ王国国民であろうと外国人であろうと関係なく、必要なら市民の自由や権利は造作もなく制限されるだろう。
それではいくら好きなタイ王国とは言え、一度、撤退してから出直すのが最善ってものだろう。
それまでじっと待てばよい!
だが、、待てよ! 一体、いつまで?
半年?一年? もしくはそれ以上か?
最悪、私自身が罹患して命が尽きる事も、充分ありうるわけで。。
ひょっとするとこれが最後になりかねない。。

先程まではタイの人々を気の毒だと、憐れむ気持ちが勝っていて気が付かなかったのだが。。
我が母国が必ずしも安全な訳でもなく。。
なんとまあそれに早く気が付いていたら。。。
もっとちゃんと友人たちに別れを言っておけばよかった、、と後悔したがそれも後の祭り。

それから約5時間後、搭乗機は房総半島沖に達し、予定通り祖国に到着。。

懸念していた空港検疫に引っかかりもせず、隔離もされずに晴れて自由の身に。
しかし皮肉にもこの時、既に我が国の首都でも、都市封鎖や国家による非常事態宣言の発令が考慮され始めていたと言う。
これだけ苦労して移動したにもかかわらず、、また同じことの繰り返しだ。
なんとまあ、既に地球上にコロナウイルスからの逃げ場はないらしい。
なんとも大変なことになったものだ。