昨今のLCCの勃興により空路移動がかつて無い程に手軽で身近になった現在、今では一昔前の高速バスに乗るような感覚で航空機が利用出来る。
航空券の物色から旅程の立案、そして購入までの一連の流れは一瞬で済み、慣れれば特別な知識や技術は必要なく、誰の手を借りずにそつ無くサッと済ませることが出来る。。

ウングライ・デンパサール国際空港出発ロビー入口。空港の出発ロビーには、数々のドラマが絶え間なく進行している。。笑顔、涙顔、万感、緊張、安堵、悲しみ、冷汗等。。それを演じるキャスト達と個々のシナリオにより、人々の表情は多種多様だ。。

昨夜のことだが知人の旅程が無事に終了を迎え、ささやかな出発の儀式に付き合った。
儀式と言っても大袈裟なものではなく、最後の晩餐を共にし、別れを言い、握手に抱擁、再会を誓い、最後に写真撮影、そして空港行のタクシーに送り込むという一連のイベントだ。

当ブログの読者様各位も、今まで数知れず繰り返して来たであろう。
例の微かに甘酸っぱい感情や、ちょっとした感動を伴うヤツだ。。

国際空港。。。そこでは否がおうにも旅情はかきたてられるが。。但し、それは万事順調な時だけ。。上手くやらないと其処はたちまち悪夢の場所へと入れ替わってしまう

そのイベントだが、、予期せぬ出来事が発生して危うく悪夢に見舞われそうになったので、その出来事を短く書こうと思う。

今回の体験者は普通の旅慣れた単独男性で当地の来訪経験も充分にあり、なんの懸念も問題も起こす様な人では無論なかったのだが。。
まあ、言ってみれば普通のイチサーファーのバリ島サーフトリップだ。
数日前から、堅実に帰国準備を整え始め、土産を買い、荷を纏め、当日の準備を済ませてすべて順調、計画通りに最後の晩餐を迎えた。

ビールで乾杯、談笑、友人同士で和気藹々と過ごす当人にとっては最後の時。
時間に余裕を持たせ、そろそろ出ようと路上のタクシーを捕まえる。
必要な時に中々、現れないのが東南アジアのタクシーだが、それでも約10分程で首尾よくゲット、料金交渉も妥当なレベルで落ち着き、万事順調でスムーズに事が運ぶ。

LCC出発カウンターは混んでいることが多いのでくれぐれも要注意だ。それでも我が国では有能なハンドリングスタッフの尽力によって意外にスムースに事が運ぶ。。しかし、東南アジアでは別。今まで何度、冷汗をかいている気の毒な御仁を目にしたことか!。。(自身の冷汗は言うに及ばず)

手分けして大きな荷をタクシーに積み込み、必要物や携行品の最終確認を手伝う。。
そして一瞬の間を置き、最後の挨拶。。
笑顔と悪気の無い冗談で送り出す。。
タクシーの運転手もよく判っている、絶妙な間を置いてゆっくりと発進。。
車窓越しに笑顔と会釈で手を振る。。

航空機搭乗にまつわる代表的なトラブルは、空港までの交通渋滞による時間的なロスなどがある。画像は悪名高いバンコク市内の渋滞の様子。いつも此処はヘビーだ!

あーあ、、行っちゃった。。一つの旅の終わりだ。。
全ての旅はいつか終わりを迎える。。
そして次の旅がまた訪れるのだ。。
何度やっても良いね、、この甘酸っぱい感覚。。
さあ、我々も解散しようかと。。想った矢先。。
タクシーの去った暗い路上の何かが私の注意を惹いた。。

最初、一度視覚情報が視神経を通り脳に達したのだが、何故か脳に入るのを拒まれた。
そして文字通り、心臓に廻ってきたのが自身で感じられた。
再度、じっとそれを凝視すると。。
そこには有ってはいけない物が。。
うす暗い路上に私が見たものは。。。

今しがた送り出した彼のパンパンに膨れた上等な革製のパース。。
思わず指差し言葉を失っていると、、石化した私を見た友人たちもそれを見る。。
次の瞬間、全員であああああーー!と悲鳴。。
パスポートから通貨、カード類もか? 何から何まで全部入ったヤツだ。
これら無しでは、生きている何人もそんなに遠くには決して行けまい。。

(死んでいれば話は別だが、これには別種の頭の痛い多くの問題が伴う)

通常はその場で電話すれば事足りるのだが、ここにも我が同胞にありがちの特有の問題が。。
彼は依然、我が国で趨勢を占めるシムロック端末使用者でWIFI無しでは連絡不能。。
遅かれ早かれ気付き戻ってくるだろうが当然、国際線搭乗の時間は迫るばかり。。

全てが順調に制御されて計画通りに進んでいたのだが、最後の最後タクシーの車内に乗り込むまさにその瞬間、急転直下の絶体絶命大ピンチに投げ込まれる。。

長くなるので結果を先に話すが、友人達をその場と宿泊施設にて待機して貰い、伝言と計画を言い残し、私がブツを持ちバイクを飛ばして一路空港へ。
運よく出発ロビー遭遇出来、物を手渡して彼は無事機上の人に。
一路、関西空港への帰国の途に就けた。

この時は運良くと言うか油断せずに出発待機の時間的マージンを3時間近く採っていたので事無きを得たが、これが2時間ソコソコの通常マージンであったなら別の結果だっただろう。
旅慣れて来ると色々な事柄が予想の範囲内で起こるようになる。
それはそれで誠に結構な事なのだが此処に罠がある。
全ての事を予想しきるのは不可能。。
時折、起きる偶発的事態を防ぎきるのも同様だ。
最後にタクシーに乗り込む時、絵に書いた様に財布を落とすなど一体、誰が予想できようか?

そうして忘れた頃に時々降りかかる災難を乗り切るには、経験と知識、そしてお金と時間だ。
どれも蓄積するのはそう簡単ではないが、時間は別だ。。
時間的なマージンを少し余分に採ることにより、事態対処の猶予が生まれる事は誰も容易に想像がつく。

バンコクのスワンナプーム空港とドンムアン空港を結ぶ公営の無料シャトルバスだが、交通渋滞は公営だろうと容赦はしない。毎回最低でも1時間は見るべきだ

私も遠い昔に幾つもの手痛い代償を払って得た教訓だ。
特に国際的な移動ともなると複雑な諸要素が糸のように絡み、際限のない待機時間の連続になりがちで苦行以外の何物でもないが。。
その待機時間を低減しようと、綿密な時間的枠組みを組んであまりにキッチリとやり過ぎると。。
その先に逆説的な罠が待ち構えている。。

無事に空港到着しても油断は禁物だ。チェックインにも1時間程かかり、それからイミグレ、セキュリティーと続き、依然として搭乗までの道のりは長いのだ。免税店で油売るのも良いが、未だに出発コンコースをスタッフに連れられて走る搭乗客の姿を目にする

折しも現在、中国初のコロナウイルスが世界各地で猛威を振るっている。
航空運送業界、各国の公衆衛生の専門機関は揃って戦々恐々としている非常事態の一歩手前だ。
国際線搭乗の予定がある人は、普段以上に時間に余裕を持たせた方が断然良いと思う。

また、昨夜見た限りでは特にいつもよりマスクを着用している人は多くは無かったが、用心するに越したことはない。
是非、マスクを持って行かれた方が良いのでは。。
道中、安全で支障のない移動を願っている。