本日の予報では、昨日までのパワフルなウネリの残りが続くとの予報が出ていた。
昨日の午後の5ft強程のサイズから更に下降しているとして3-4ft程と予想し、昼頃に現場到着で上げから引き潮にかけての時間帯を目論んで出勤。現場に着いてみると、、ピークを過ぎた典型的な減少傾向の遅いウネリがリーフ全体で割れている。
貿易風も強く、海面全体が既にざわついている。
にもかかわらず昼の時点でそうで60名程が入水している。

シークレットの方に目をやると、、沖に辛うじて一人の姿が見える。
減少傾向で小さく混雑が予想されていたので早捕りを考えていたのだが。
途中で衝動的にナシチャンプル屋に寄った分だけ出遅れてしまった様だ。

インドネシアでお馴染みのナシ・チャンプル。出来合いの品の中から任意でおかずを選んで白米や赤黄米で頂くシステムだが。。 味は? それは言い難いが、見ての通りだとだけ言っておこう。

まあいいや、今日は一番短い板で基本的練習や修正確認に徹するつもりで、用が済めばすぐに上がる計画。
持って出たのは、ルークスチューダー・エースモデルのエポキシ6’2、ボリュームは30Lに設定してある、

何の特徴もないカスタムボードだ。
まあ、言ってみれば誰でも乗れる癖のない大衆車トヨタカローラと揶揄している。

レーストラックからコーナーにかけて人が散らばっていてご盛況だ

それで出て行ってみると。。。
既にラインナップ上には3名が先行していて、私の愛好スポットも先約済みだ。
波が小さいので人の列も散らばる様子は無い。。
パドルで登って行き顔を確認すると、昨日は途中から現れた少し上手い御仁がトップに居る。

実力や戦力が拮抗状態で、他人同士が狭い範囲で波に乗ろうとする場合、
何らかの取り決めが無いと非常にやり難いのが波乗りだ。。
何故か? それは捕りたい波やその捕りたい場所までが似通るので、動きが同調してしまうからだ。

解決策は、敢えて同じ場所でやらない。(微妙にずらして、同じ波を追わないようにする)
それか、同じ場所でやるなら、競り合わないでお互いに順に廻しながら和気あいあいとやる事だ。

後者は、通常友人同士でならやる手法。。
本日の状況では、そのうちの一人とは昨日自己紹介を済ませたとは言え、赤の他人が3人程、固まっているので辞去する他ない。

これも大事だが、、いきなり頭ごなしに彼らを追い越して奥に行くのではなく、軽く会釈をしてバッティングを避けるために離れると意思表示をしてから越していく。

世界各地から来るサーファーが集まるバリ島のサーフシーン。
人種、文化的背景、習慣、気質、技量等すべてが違う人間が集まり、皆一様に一つの物を追うのだ。
統一された決まりはない、有るとしても多数に支持されて居るであろう共通認識くらいか。。
それですら心許なく怪しいものだ。。
これで、争いが起きない訳は無いだろう。

現在は、多少の棲み分け、危うい共存関係が成立しているが。。
基本弱肉強食、利己主義の世界だ。。
表向きは均衡が取れてはいるが。。。内心は皆、心穏やかではないのがサーファー達のホンネ。。

原油価格が一時的に急上昇した2000年代後半の一時期、産油国であるブラジルから血の気が多く、ルールも気質も文化も全く違うラテン系ブラジリアンサーファー達が大挙してインドネシアに押し寄せた。
その初めの頃の数年、先行アングロサクソン系西洋人達と彼ら達の間で勃発した諍いは見物だった。

それから10年の時が過ぎ、今日では後発のブラジリアン達が世界のサーフシーンのスタンダードに順応する形でバランスが保たれている。

話を戻そう、彼らを追い越してさらに奥に落ち着いた私。
厚い波質で好きではない波なのだが、上手く捕れば落差のあるボトムターンから優しいフェイスが続き、やがてフェイドする一般受けする波。

暫くすると、、おあつらえ向きのセットの塊が。。
注意深く選び位置を合わせ、久々の短い板に多少の違和感を感じながら波を追っていく。。
一本目が合わなくてスルー、周りに人はいないので空かさず2本目に標準を合わせる。(これも多人数のシチュエーションではルール違反)

同時に3本目の存在も視界の端で確認、、漕ぎながら相対位置を勘案しながら予想する。。
2本目も行きかけたが、、海流が影響し依然として不利な位置なので中途辞退してそれを越すと、、そのまま3本目。。

良い位置だ、、これに決める。
横の位置は合っている、、今度は縦の位置を合わせて。。
波が真後ろに迫り、、持ち上がった瞬間に。。一瞬で立上がり。。
と想った束の間、、板が落ちて行ってない。。
立っているのにまだ波のリップの上だ。。

その時やっと気付いた! 昨日までは力のある波で重い板を使っていたのだが、、今日は20%近く軽量化していると言われるエポキシの板だったのだ。
しかも、3ftの非力なウネリだ、当然板は走り出さない。
板は落ちずに波の上まで挙げられてしまう。
全ての動作を正しく行い、、板の上にも立ち上がっているのだが・・
速度は0、、後は重力の法則に従い、2メートル程落ちるだけ。
バランスを崩しては居ないので、足も態勢もすべて正しい位置。。

これが結構な曲者だ。。
落ちると言っても、荷重がかかる正しいポジションから足が抜けず、コケられないのだ。
かと言って、2メートルもの高さから重力加速度を人間の足で支えるのは無理。。
結果、前足の膝を板に強くぶつける羽目に。。
しかも、固いエポキシ樹脂とガラス繊維で出来た複合素材の板。。
瞬間、膝が板にめり込むのが判ったが、、当然その後に激痛。
そして水中に叩き込まれる。。

無意識に水中で骨折はしていないのを確認、、今度は呼吸する為に水面を探す。。
一呼吸して、今度は手で触り裂傷の有無をまた水中で確認。。
強く鈍い痛みが続くが鋭い痛みは無いので、大きな裂傷は無いようだ。
通常、一定以上の強さの物理的衝撃が人体に加わると皮膚組織は割れてしまうのだが。。
幸いにも今回は板が割れたことにより、その衝撃が吸収された様だ。

見難いが、膝がめり込み大きく深い穴が開いて、この後すぐに修理工場行きに

何とか水面に上がり、今度は出血の有無を見るが。。
傷みの割には出血も無い。。
続いて関節機能の状態をチェック、、右足全体が痺れているが、動かせる。。
ふー、、良かった。。ひどい痛みだが外傷は無いようだ。
あるとしたら膝の皿が割れたかその周辺組織のダメージ位だろうが、、それも無さそう。。
充血し腫れる前に全体を冷やして腫れ止めを飲まなければ。。。
かと言っても、そこはウルワツ・テンプルシークレットの奥の間。
家までは遠い道のり。。はは。
自他含め何度もクリアしてきた危機だが。。

腫れを抑制するのは外傷の標準手順だ。冷却と腫れ止め服用、圧迫固定と挙上でもしておけば回復も早い。

結果、何とか帰宅し調べてみると、、そんなに重傷ではなかったので安堵した。
重傷ならパタヤ修行に移るまでだ。。
膝が使えなくても創意工夫で修行は行えるのだ!

そんな訳で、こんな感じに毎日色々とあるのが波乗り修行だ。
楽しいばかりじゃ修行ではない。
困難さがあっての修行だ。
常に冷静、的確に対応していきたいものだ。

本日、私から言えるのは。。
板を替えたら頭の中のOSも忘れずに切り替えることと。。
傷害を負ったら早急に適切な処置を行えば最短の回復が見込めるってことだけだ。
皆さんは私の様な間抜けな目に合わないであろうことを願っている。