バリ島を訪れた人の多くはバリ島観光の目玉の一つ、ウルワツ寺院に行ったことが有る筈だ。
バリヒンヅー寺院が海岸に面した絶壁の上に建立され、そこで毎夕行われる観光祭事イベントのケチャック・ファイアーダンスは、バリ島を訪れるのなら一度は観ても良い類のエクスカーションだ。
海面まで落差は100mはあろうか?
そこから眺めるインド洋に沈む落日シーンは絶品。
儚く静かに沈んでゆく夕陽は私の様な長いバリ歴を持つ輩でさえ、しばしの間、無言に眺めて入ってしまう。

狂乱の乾期(5月から10月期)の間、バリ島南部ブキット半島の南端ウルワツで、ほぼ毎日漏れなく無料で楽しめるインド洋に沈む落日シーンはプライスレスの美しさだ。画面奥に映る遠い方の断崖上にウルワツ寺院がみえる

そしてもう一つ有名なことがある。
いや、有名というよりは世界的に悪名を轟かせていると言った方が正しいのかもしれない。
ウルワツの悪猿達だ。
長年、ヒンヅー教で崇められ続けた結果か?
或いは無邪気な観光客によって引き起こされた観光公害の一形態なのかは定かではないが馬鹿猿達が惹き起こす深刻な猿害は有名だ。

明らかに弱者である乳児から盗り上げた哺乳瓶のミルクを飲み干す悪猿。自分より弱い物から盗るのは厳しい自然界の掟。乳児用のミルクはさぞかし美味な事間違いない

被害者は無数で、判っている私でも昼飯やサングラス等を複数回やられたことが有る。
彼らが無邪気無防備な人間達に働く傍若無人な悪行の数々には驚かされると同時に辟易ものだ。
その手口は年々、洗練巧妙化してきて単に盗み出すだけでなく、複数で陽動作戦を仕掛けて群れでの強奪作戦までやらかす。

私の目前で突如始まったライブショー。反射的に手にしていたポカリスエットを置き、写真撮影をしたところまでは良かったが。。別個体が背後から計画的に。。

そんな猿など追い払えば良いなどと、決して侮るなかれだ。
彼らは威嚇や攻撃されれば、噛みついたり引搔いたりと反撃する事を厭わない。
そして彼らは狂犬病を媒体していると言われている。
バリ島は狂犬病の汚染地域、やられたら早急に病院行だ。。(24時間以内の予防接種が賢明)
そして彼らはそれを理解している(理解している様に限りなく見える)

英国の王立協会が(権威ある学術論文誌)、ウルワツエリアに生息する野猿達を273日間にわたり調査し、幾つか明らかになった事が記事になっていた。
それをかいつまんで挙げてみよう。

どうやらこの憎たらしい野猿たちは人間から強奪した品々の価値を査定し、それに基づいた報酬を得ようとする社会的な同意が群れの中で成立しているらしいのだ。
いざ活字にしてみるとそれは荒唐無稽で大それた感じがするが。。
近年、実は我々もそれについては薄々感づいてはいた。

最近のレートでは、例えばアイフォンを交換する場合にモンキーバナナ等では明らかに価値不足。生卵や甘く熟したフルーツでも付けないと取引が成立しないのだ

以前はヘアゴムや安いサングラス等の取るに足らないアイテムを好んで狙ってきたのだが、最近ではめっきりとそんな物には関心を示さなくなった。
彼らは伝統的にキラキラと輝く人工物等に興味を示してきたのだが、彼らはどうもそれらが人間にとっては馬鹿げた価値しかない事を気付いた節があるというのだ。

最近では車両強盗までやらかす。車両の外装品の破壊はもとより、車内にある食料や病院帰りの気の毒な高齢者の処方薬まで強奪したのを目撃したことがある。

私が目撃した事例では、カメラバックのジッパーを開けて中の非常に高価なレンズ類、眼鏡や車の鍵、ココナッツやカカオが添加された高級なコスメ類、デジタルデバイス類が盗られたケース等がある。
またある時は店の冷蔵庫を勝手に開けてビールを飲んだり、乳児を威嚇して旨そうな流動食やミルク奪い取ったり、ローカルも腹一杯は喰えない高価なドリアンを好んで狙ってくる。

観光客から巻き上げた清涼飲料水。ペットボトルの蓋を開けるなどは彼等には朝飯前、歯を使って器用に一瞬で開けてしまう

彼らはそれらのアイテムが人間にとって価値が高く、それと引き換えにされる報酬が高くなることを理解しているのだという。
そしてそのハイバリューターゲットの情報を群れの中で共有されているのが認められたという嘘の様な本当の話なのだ。

羨ましい事この上ないが、こんな所にまで潜り込んだり。。忌々しい悪猿め!

特に若い女性や子供に対してはもうやりたい放題に悪事を働く。

調査によると、これらの技術を若年時が終わるまでに習得され(概ね4歳頃)、成長と共により良い報酬を得る技術を各個体で磨いていくのが認められたという。
そしてこれらは群れの中で少なくとも30年以上わたって世代間で受け継がれた情報技術の蓄積共有の結果だと結論付けられている。

人懐っこく見え時にユーモラスな姿を見せる野猿の群れだが油断は禁物だ。
席を離れる時は手荷物を開けたままにしない事、車の窓は閉めておき、キラキラと無機質に輝くデジタルデバイス等は猿(他人もか?)の目に触れない様に留意するべきだ。
彼らは予想以上に手強い、今度ウルワツを訪れる時はくれぐれも用心して欲しい。