本日から暦が一つ進み、既に五月。
折しも、我が国は大型連休の真っ只中。
しかし、そこには希望も高揚もなく、在るのは途轍もない不安と絶望だけだ。
そして、外出すらもままならなく、気分は落ち込みがち。

その慰めになるかどうかは判らないが、長年、デュアルライフを送る私が、僅かだが言えることが2つほどある。
一つは、現在、我が国で執られている日常生活上の制限措置は、私が見聞きしている諸外国のそれに比べて断然、軽微で済んでいること。
未だにパチンコ屋等が開いていること自体が、その顕著な例だ。
今では世界中に散ってしまった親しい知人たちの話によると、彼らが対峙している日々の制限はこんな生易しくはない。
そして、それらの制限措置には、何処もシリアスな罰則付きだ。

2月頃のバリ島ヌサドゥアビーチの様子。まだこの頃は、誰もがコロナウイルスの感染騒ぎなど、遠い中国本土での話だと想っていたのだが

2つ目は、その厳しめな制限措置を行ってきた他国には、ようやく防疫上の明るい兆しが見え始めて来たこと。
我が国と比べ、割と早い時期に厳しい制限を課してきたタイ王国では、新規感染者や死者の数がここ2週間でかなりの落ち着きを見せている。
その為、月が替わった本日以降、閉鎖していた民間商業や航空路を徐々に再開に向けて動かし出すようだ。
酷い疫学上の大災害の次には、今度は瀕死の自国の経済の立て直しの大仕事が控えているが。。

ダブルシックスビーチ

インド洋に沈む落日シーン。乾期のバリ島西海岸には、それを求めて毎夕、幾千の人々が繰り出す。ダブルシックス・ビーチ スミニャク

先行した他国とは言え、彼らに光明が差し始めたのには慰められる。
我々も、ようやく底を迎えつつあるのだと信じたいものだ。
底さえ越えれば後は上り坂、その後にはまた元の平坦な道が待っている筈だ。
それが、現時点で我々が持てる最良な希望ではないだろうか?

この後すぐ、このローマ出身の若者の母国を未曽有の危機が襲うなど、誰も想像すらしていなかったのだが。。彼が無事なのを願うばかり

そんな淡い希望に縋りながら、今を何とか乗り切っていこうと想う。
世界は酷く変わってしまったが、なんとかそれに向き合うしかない。
それなら嘆き続けていてもしょうがないので、今から僅か3カ月前のバリ島内の日常風景を振り返って、束の間の現実逃避をしてみよう。

ほぼ満載で沖のラインナップに、波に飢えたサーファー達をピストン輸送するボート、これ自体が濃厚接触になりそうだ。今ではボートも営業を停止、ビーチは閉鎖されて波乗り自体も禁止されている。最近までは忍び込む輩が絶えないとの話だったが、実際の逮捕者が出てからは話が変わったらしい。 ヌサドゥアビーチ

人間社会の惨事は別にして、自然現象はそれに関係なく進んでいく。現在、波乗りには最良の時期に突入したバリ島。毎日、南氷洋からの幾千の極上波が乗られる人も無いまま、手付かずで割れている。なんという浪費だ!

国際的なビーチリゾートとして好調なインバウンド需要をマークしてきたバリ島だが、それ故に島内経済の観光依存度は非常に高く、今回の危機の後には何が残っているか皆目、見当もつかない。 Rumah Kopi Jan Guno

これと言う他の産業が発達していないバリ島では、観光産業とそれに関連従事するインフォーマルセクターに分類される無数の人々がいる。ツーリスト自体の姿が蒸発すれば、彼らには為す術がない

今考えると、外に居るだけで濃厚接触になりそうな世界第4位の人口を抱えるインドネシア共和国。案の定、彼の地ではウイルス感染の拡がりに対して抑えは効いていないと聞いている

潤沢な若年単純労働人口を持つ東南アジアの開発途上国では、マッサージ・スパ系娯楽産業はポピュラー。そして、その殆どが閉鎖環境での、ある種の濃厚接触を売りにしている

よく来たな! まあ、好きなのを選んでくれ! グリア・ブガー ヌサドゥア・バイパス

インドネシア共和国は、鳥インフルエンザの主要な発生国でもあり、養鶏トラックの後ろをバイクで走る時は、毎回、息を止めつつ、なんとも落ち着かない気持ちになる

増え続ける世界人口は、私が以前に小学校で聴いた数字の6割増し。その分、野生動物と人間の接触する機会が増えているらしいが。。

生物が増えれば競争は激化するのが自然の原理。人間も動物も己の種の保存に躍起なのだ。そう、ウイルスや病原体も。。隙を見せれば、即刻負けるのは自然の掟。

失くしてみて、初めて分かった平凡だが自由で健康的な日常。もう2度と退屈なんて愚痴らないことにする

開発途上国とは言えバリ島はインドネシアの中でも裕福な州なのだが、今回の危機には到底、無事では済まないと彼ら自身が言っている。真っ先に影響を被るのは社会の下層に属する彼等で、それを救う社会的セーフティーネットは依然として、脆弱で未発達。

ここ20年程で急発展してきたインドネシアはネクスト11と言われるグループに属し、次に分厚い新興中産階級の発現が見込まれる国々に数えられる。バリ島でも裕福になり、既に我々と同じ価値観やライフスタイルを持つ若年層が出現して久しい

時折、酷い自然災害や爆弾テロ等の災厄が発生するが、それでもバリ島は平和な島だ。元の平和が戻る日は本当に来るのだろうか? そう願わずにはいられない

私がバリ島を出国したのは、今からちょうど2か月前。現在のバリ島は、既に変わり果てた姿と訊いている。3月初旬 ウングライ・デンパサール国際空港

3月当時、既に商業航空便は手酷い需要落ち込みに喘いでいたが。現在では運航すらしていない。そして路線再開どころか、事業体の存続自体も危ぶまれている。仮にパンデミック自体が収束しても、商業航空市場が簡単に元の状態に戻るとは思えない。

とまあ、現実逃避のつもりで幾つか写真を選んでみたが、書いていくうちに悲観ムードに呑まれてしまった。
ネガティブ・コメントの羅列になってしまった点を容赦して欲しい。
それらは、あくまでも私個人の観点だ。

元からそんなに悪くは無かった世界経済は、予想外の大きな落ち込みであった分、案外、V字回復を遂げたりするのかもしれない。。
例えV字では無かったとしても、今まで常に人類社会は危機を乗り越えて来たように何とかなるのかも。
今回も、いずれはそうなることを切に願うばかりだ。