乾季たけなわのタイ王国に赤道を挟んで、おおよそ正対するインドネシア共和国バリ島。気候もちょうど真逆の雨季真っ盛り、よって先週までのタイでの乾季フルーツのセレクションとは大体反対になる。(移動が続くと時々、混乱してしまい、何を買って良いのか全くをもって謎になる。下は店先に並ぶ豊富なタイの雨季が旬の果物たち)雨季と言えば開発途上国ではお馴染みの街じゅう水浸しの大洪水だ。私の幼少の頃は我が国でも有名なよく水害があった感が。(近年は気候変動による新しいタイプの水害が増えていると聞くが)

(見よ!この数時間前に沖で勢いを増しつつあった黒い雨雲の塊を。母なる自然の前では、ちっぽけな人間などには勝ち目は最初からないのだ)

先程の散々な結果に終わった夕方のサーフセッションを短く切り上げ、土砂降りの中を帰宅し、明日の早朝の復讐戦を目論んで早めの夕食を摂るべく、傘を差し近所のピザ屋に出向いてみたところお約束の光景が。既に退いてはいるが店の中まで洪水が浸水した模様でスタッフが後片付けに励んでいた。土砂降りといっても正味1時間に満たない降雨経過時間でこの惨状だ。一体、どんな都市計画をしているんだよ!
まあ、雨季のソイブッカオだって似たようなものだ。多少、衛生状態が気になるが訊いてみると、もちろん通常営業を継続中とのこと。どうせ、雨が止まなきゃ誰も来ないとのこと。それではと、取り敢えず早く済ませたいのでピザを注文をすると、、代わりに渡されたのがこれだ!おいおい、ただ夕飯を食いに来ただけだぞ!なんで洪水の後片づけしなきゃいかんのだ?被災者じゃないぞ! バケーショナーだぞ! とは親しくしている知り合いなので言わなんだが、しかし。。

どうせ、待ってる間、何もせずに見ててもなあ。ということで暫く手伝ってみた。3人でものの10分もしないうちに片付いて、やれやれだ。で、ここで東南アジアでありがちな懸念が浮上する。せっせと順調に進行する私の今夜の慎ましい夕食のナポリピザ。だが、、おねーさん!さっきまで素手でモップを絞ってたよね! ね、手洗ったよね? と小学生低学年児にするような質問が喉から思わず出かかるが、それを何とか無理やり呑み込んで手を凝視してみる。本格手作りピザが売りの当店、オーダーしてから毎回、素手で練り上げる自慢のクラスト。焼きに入る時点では既に充分に練りこまれ、延されてその工程はとっくに終わっている。手はまるで声高々に推定無罪を主張しているかの如く綺麗な真っ白さだ。

ガーン!何せゴミ処理が最近、ようやく始まったばかりのバリ島、依然として下水処理施設など1箇所もなくすべて垂れ流しだ。その街路に溢れ出た汚染水だ、それに接触する足などに傷があればすぐに化膿していくレベルで汚染度はきつく、日頃からケアが欠かせない。そして、その一部が今夜の私の夕食に練りこまれているなどと考えるだけでも。。オエー! 泣

(下はつい先日、目撃にしたソイブッカオでの地下埋設下水管の清掃作業。乾季たけなわのタイでは、訪れる次の雨季に向けての当局の対洪水治水対策の一つなのであろう。先進国では産業事故防止の必要性から、防護服、送風通気菅、場合によっては呼吸装置がないと許可が出ないレベルの作業だが、ここでは素手、装備は長靴だけでまともなゴーグル、マスクすら使われていない。中進国に成長を遂げたタイ王国だが、命と労働の対価は未だ思いのほか安いようだな。

(以前何かで読んだのだが、このような汚れ仕事には出所の見込みのない重罪収監人が動員されるとあったな)

かと言っても今更どうすることも出来まい。無かったことかオーブンの熱で消毒されることを祈ろう。

しかし、この後すぐに出てきたピザは、懸念とは裏腹にいつも通りの出来でアツアツ、トロトロのとっても美味しく満足できるものだった。たとえ少々洪水フレーバーが混ざっていたとしても。