先々週から数日前まで関西地区で時間を過ごしてきた。
彼の地には疎い私には毎回の滞在がかなり濃密で刺激的なものとなるので、関西はかなり気に入っている。
目に入る物は勿論、思考様式、言語すら私個人の慣れ親しんだものとは異なっている。
いつも戸惑いと驚きの連続で、まるで異国体験そのもの。。

ブログ再開早々、こんなネタを書くのは少々気が退けるがシェアすることにする。
個人ブログとは言え、れっきとした公共媒体なので内容には各種の制約がある。
そして、それに従う事はマスト。。
従って少し想像力を働かせて読んでもらえれば幸いだ。

今回は大阪観光の目玉の一つ大阪ミナミ、通天閣タワーの聳え立つ新世界エリア。
その新世界にある老舗シネマ、新世界国際劇場に足を運んでみた。
具体的な所在は大阪市浪速区恵美須町になる。

通天閣タワー。ルーツは意外と古く1912年にパリのエッフェル塔をモデルとして造られたとあり、大戦中に一度撤去された後、1956年に現在の構造物が再建されたという。言わば、南部大阪市観光のシンボル的存在の一つだろう。

新世界国際劇場はその通天閣タワーから徒歩1~2分、ほぼ天王寺公園側に面している。
背後に高架道路が通り、日当たりが悪く、どことなく陰気な環境にひっそりと佇んでいるところが、いかにも場末的な雰囲気を醸し出している。

昼過ぎに現場についてみると、既に結構な数の自転車が停まっている。
旧作や秀作を選んで単館上映しているタイプの劇場らしい。
この種の劇場は、シネコン全盛の現在でも絶滅危惧希少種として全国の地方都市に時折現存する類の映画館の一つで、一部のコアの映画ファンには根強い人気があるという。
私が幼少の頃には普通に存在していた手書きの映画看板が渋い。。

幾つかの洋画が上映日や時間によって上映されている。。
この辺は、前もって下調べをすれば内容はすぐに判る。
しかし、今回は大阪観光のアングラ的なモノは何かないかと調べていて偶然見つけた代物が対象。
お目当ては、少しばかり他とは違う肌色多めっぽい内容を上映している地下劇場と地上階のシネマ。(詳しくは知らないが、昔はナンとかロマンって呼ばれていたヤツもしれない。。)

どちらも、建物正面に鎮座している薄汚れた券売機で入場券を購入する。
料金体系は、確か地下劇場が800円、地上階劇場が1000円で、夜間はナイト割引が適用されるシステムらしい。(割引前でも、充分に安いけど。。)

背景説明はこれくらいにしよう。
晴天の真昼間に暗黒の魔界に入るのも気が引けたので、先に通天閣周辺を一通り見ながら腹ごしらえ、ジャンジャン横丁で寿司を摘まみながら一杯ひっかけてほろ酔い気分で映画鑑賞としゃれこんでみた。
時の頃は昼下がり、気だるい午後の中頃。。
昼下がりのナントかって情感がピッタリな時間だ。。

券売機から出てきたケチな紙片を握りしめながら暗い階段を降り、ブースに詰める妖しい親父にそれを渡し、更に下降し地階に到達。

それで先ずあっけにとられた。
なんと、いきなりスクリーンだ。
ドアも区画もない。
地階全域が劇場となっている初めてみるレイアウト。
直接的でかなりの直球なシステムだ。。
きっと、初期の頃の昔の劇場は何処もこんなものだったのだろう。。

壁際に立ち、目が慣れるまでジッと辺りを眺め廻してみる。
暗い中に10人くらいの客の姿が見える。
というか、目を凝らしても気配と影しか見えない。。
時折、人がゆっくりと動いて居る。
辛うじて感じると言った方が近いかも。。

次に感じたのは湿気と辺りに漂う独特の臭気。
悪習の一歩手前、臭いとまでは言わないが何か異質な匂いだ。
コロナ・パンデミックの関連措置で、座席は一つ置きにロープが張られて座れない様になっている。(オーケーだ!どうせカップル用途ではない、それに異存はない)

そうこうしているうちに客の一人が歩き出して、突如、この一風変わった地下の魔界に降り立った闖入者の私の顔をガン見しに来た。
正面切ってじっと私の目を覗き込む。
距離にして1m程か?
人から直接こんな凝視を喰らうのは、好きではなかった持久走クラス延期のガセ情報を教室内に流して受けた小学生の頃のお説教体験以来か。。
闇の中で一瞬、目が合った気がした。

上等だ! 冷めた目で睨み返してやる。
私は最後列でスクリーンに正対しているので、相手には私の視線は視認できている筈だ。
しかし、逆光アングルの私には相手の顔全体は漆黒の黒つぶれの闇。。
まるで地獄の入り口に巣食う邪鬼の様だ。。
相手の立ち振る舞いからは何も読み取れない。。

注意と視線を他へ向けると。。
客席前方で何かがおぞましそうな物が蠢いているのに気が付いた。
オイオイ、なんだよ!
映画館でその一風変わった動きは??
衛生上の問題が推測されるジメっとしてベタつく座席に座るのは、この日に是非やりたいとと想ったことではないが、好奇心に逆らえず近くの席についてみる。。

そこにはこの個性的な秀作を特別単館上映する劇場で、熱心にスキンシップをしながら映画鑑賞に励んでいるコアな映画ファンの姿が。。
そして、どうやらそのファンの一人は異性装的な装いに目覚めているようだった。
なるほど。。これが魔界と揶揄されている所以か。。
わたしも、その鑑賞方法からなにか読み取れるものは無いかと、その場に留まって彼等と上映を暫く愉しんでみる。。(済まないが作品自体のストーリーは全く覚えていない。。)

10分程経った頃か。。
私の背後に別の客が席に着く。。
これまた熱心な映画愛好家の集いが始まるのかと期待しながら反応を伺い、大人しく鑑賞を継続していると。。
背中から肩口に手が触れる。
何か上映内容について質問でもあるのかと勘繰りながら、振り向いてみると。
其処には午後のささやかな息抜きか、それとも単なる仕事サボりか?
ネクタイ眼鏡、ワイシャツ腕まくり姿の目だけがぎらついた冴えない壮年サラリーマン風の男の姿が。。
相手の意図が不明で、私側にも映画鑑賞についての問題は無かったので振り向きざまに首を横に振ってやった。。
唐突に背後に忍び寄ったそのコアな映画ファンとはそれっきりだ。。

それから一時間弱程か?
映画鑑賞を続けながら、この地での個性的で、且つ特徴的な単館上映モノの楽しみ方を鑑賞してみた。。
さすが人情の街大阪。
ナニワの情の熱さは劇場内に居る時でも充分に発揮されているようだ。
中には思い余ったのか? 情熱のほとばしりや嬌声じみた歓声も耳にすることが出来た。
作品の内容もさることながら、その鑑賞方法にも参考になるところが本当に多かった。

なるほど。。大衆演劇の劇場も隣接しているこの地。。
後刻覗いてみたところ、この地では何か女形の関連する演目に特に人気がある様だ。
次回は、それに準ずる様な服装で再訪してみるのも手かもしれない。。
ともすれば熱烈な映画ファンの集いに参加を許されて、彼らの積極的なそのスキンシップを交えた映画談議に参加ることも可能かもしれない。。

親愛なる読者様方、想いを同じくする熱心なファンや好奇心旺盛な勇者は大阪で機会が有れば是非行ってみて欲しい。。
他では味わいにくい稀有な鑑賞体験ができるかも知れない。