先日、首都圏からの手軽な観光保養地として有名な静岡県伊東市を訪れた時のこと。
時は昼を優に過ぎた頃、腹を空かせながら当地最大の売りであろう海岸通りを流していて偶然、お誂え向きの物件が目に入った。
この時間帯は営業しない店が多い中、まだ開いているようだ。。

目抜き通りからこんな物が目に入れば、それに抗うのは難しい。腹が空いていれば尚更だろう

一度安全なところまで通り過ぎ、Uターン。
現場に戻り、店舗外観をしばし吟味する。
事前情報も前知識もなく、ただ店名が伊山とだけ書いてあるのがわかる。
いやま? 聞いたことないな。。(直ぐにいざんと読むことが判明)

どうです?この炙りゆず塩とやら。この心揺さぶられるクリアなスープ画像。私にはタイトルからして美味そうだった

掲示されているメニュー構成を見ると、それだけで直球ストレートなツーストライク。
周辺状況を見渡すと二部構成の駐車場があり、店舗外観はいたってシンプル。
昼飯時はとうに過ぎているにも関わらず、中には寡黙な男性客が黙ってカウンター席についている。

店舗内は清潔で機能的。きちんと整頓され、食券販売機の利用は停止中と張り紙、口頭での注文を受け付けると書かれている

厨房にオーナーチェフらしき風体の人物、そして店舗スタッフとして若い女性が数名。
最近、ラーメン店巡りをしていて気が付いたことがある。
既にラーメン戦国時代と言われて久しいが、近年の新進実力店には多くの場合、店舗スタッフとして若い女性の姿が見受けられる気がする。
(あくまでも個人的な感想だが。。)

メニュー構成はこの通り。味噌、塩、豚骨、醤油を網羅し、冷やし、つけ麺、細麺対応もしている模様。

此処まで数十秒を要し、判別できた情報の全てが人気実力店の特徴を指している。
これでは黙って通り過ぎるわけにはいかない。
更にゆっくりメニュー吟味に数分を費やしながら、頭に浮かんだ疑問と店員に乞う質問事項を整理する。

非常に手際良く、無駄なくキビキビと動く彼らは言葉を発しない。カウンターはカスタマイズ対応がなされ、厨房は綺麗だ。今時、汚いラーメン屋で頑固おやじの出すラーメンを黙って啜るなんてスタイルは前時代的なオワコンなのかもしれない

席に着くと、早過ぎず遅すぎない絶妙な間を置いてからメニューを手に挨拶にくるスタッフの物腰はスマート。
ラーメン探訪を繰り返す身の私が初回で選ぶ品は、奇を衒う具材や意表を突く分量等で、惑わされずに実力が露呈しやすいクリアスープのシンプルな中華そば系統だ。
よって、あぶりゆず塩なるモノを大盛で頼む。(100円増しらしい)

しかし、焼津産鰹節と煮干しを使用した ”節とんこつ” とやらも捨てがたい。。。
ついでに接客する女性に、シグニチャーメニューらしき伊山の王道と書かれた ”パワーとパンチの旨さの三拍子・大麺平打ち麺” について訊いてみると。。

厨房でもやしがうず高く盛られていく大麺平打ち麺を横目で見ながら、実際に聞いてみたところ。。

一言、女性の口から(二郎系ですから!。。)と、自信ありげで簡潔明快なお言葉が。。
近頃、拉麵宗派を表すであろう家系や二郎系という言葉。
よく耳にする割には意味がイマイチ不明瞭。
後でGoogleしてみると、モヤシなどの具材をうず高く積み上げ、時に採算度外視をも厭わない山盛り、コテコテ、太麺のスタイルを指すらしい。

駄目だそんなの。。
私の好みからは全くの真逆。。
そんな物で玉砕するよりかは此処は潔く負けを認め、やはり ”あぶりゆず塩” でと辞去。
せめてもの慰みとして、大盛と少々のすりおろしニンニク添付のカスタマイズを依頼。
そして待つこと10分程。。。

ゆずが中程度香るスープに細麺。漁師町には似つかわしくなく、街中にでもありそうな上品な薄味。

出てきたのは何とも美味しそうな拉麵。
細葱がデコレートされ手の込んでいそうなチャーシューが控えめに載った姿は、単なる中華そばとも言い難い。
ただ大盛を頼んだ手前、やや拍子抜けするサイズ感が少し。。
腹を空かせた憐れな御仁は、黙ってシグニチャーメニューの大麵平打ちにした方が良いのではと感じた。
しかし、それは朝から何も食べていなかった私の自業自得なのかもしれないが。

先ずスープに口を付けてみて、止まらなくなった。
私は美味いラーメンに出会うとよくやるのだが、最初にスープをゆっくりと何度も味わい吟味する。
初めは風味の出所や素材に想像を巡らせ、次にそこに包含する作者の意図に想いを巡らせてみる。(料理の経験がある訳ではない、あくまでもいちユーザーとしての自己流で。。)

そんな事にかまけていてしばらく麺に箸を付けないでいると、麺がスープを吸い込んで増々スープが無くなり、しまいには麵の伸びた台湾汁ソバみたいになり麺の方の味わいが台無しになる。
今回は何とかそれを思いとどまり、麺を先に平らげてから改めてスープの吟味を続けた。

麺が無くなると柚子の香りがさらに際立つ。
歳をとりシンプルな塩味に増々目が無くなった私は、塩をほんの一つまみパラパラと落とし、それを混ぜずにひたすらスープを啜り続けた。
最後はめでたく丼の底が見えて終了。
ゆず塩がこの味なら節とんこつの方も大いに期待できるだろう。

このまま続けてもう一杯行くか?
真剣に暫く考えた末、一杯完食直後ではフェアな状況にはならないと思い留まった次第だ。
節とんこつの試食は次回に廻そう。。
長々と感想を述べたが、結局お味は?
それはレンゲでスープがすくい切れないところまで行ったとだけ述べておこう。
最後に所在を挙げておくので勇者は試してみて欲しい。

尚、店舗HPは見当たらず、営業期間や定休日に関する情報は直接店舗へというような記述も目にした。(Googleよると、午前11時から午後3時、午後5時から9時までとなっている)

最後に食事中の客が居て時に断られることもある店内撮影だが、一介の観光客だと断りながら店内撮影の許可を求めたところ、快くそれを許可して頂いたことを付け加えておく。