東京下町浅草近辺の銭湯を巡っている。
記憶は定かではないが東京での銭湯となると、う~ん、少なくとも40数年ぶりになる筈。
セピア色に褪せた幼少の頃の遠い記憶を手繰る。。
手狭な下足場が並び、子供の目には広く映る脱衣所に足を踏み入れ、そこで寡黙な親父たちが黙って服を脱ぐ光景が蘇る。。

繰り返しになるが事の性質上、銭湯の施設内観の画像撮影は難しい。清々と写真が撮れるのは下駄箱くらいか?。。オイオイ、まだ開店直後の午後2時過ぎなのに靴入れは既に結構塞がっている。。平日午後のこんな間抜けな時間に風呂屋に来る輩ってどんなだろう?

銭湯文化の衰退をよく耳にし始めてから、既に20年以上の時が過ぎている。
2021年の現在の東京。
折しもパンデミックに緊急事態宣言。
これに慢性的な少子高齢化が加わり、都市住民の核家族化や生活自体の西洋化も重なる。
一体、この時代の国際都市東京には如何ほどの銭湯が残っているかと、その見当も付けられずにいたのだが。。

足を延ばせる範囲をサッと検索しただけでこんなに出てくる。。言うまでもなく、グーグルは全てを網羅している訳ではない

そしてマップ検索して見て驚いた。
有るは有るわだった。。
なんだ!地方都市なんかよりずっと有る。
東京人よ!あなた方、都市住民達は皆シャワーじゃないのか?
流行のスパやスーパー銭湯でなく、まして個人志向の対極を行く時代物の銭湯など。

昭和の香りが色濃く残るというか昭和そのもの。ここだけ時間が止まっているようだ。これらにノスタルジーを感じるには昭和世代でなければならないだろう

中へ入ると小さなカウンター式番台に女将。
脱衣所、システムは標準的なもので特色は無い。
料金も500円前後、営業時間は14-23時らしい。
館内は総じて清潔に保たれていて瑕疵はなく、客層は殆ど全てオヤジ達だ。(女湯は不明)

飲み物や必要小物類が売られている。未確認だがタオルや何やらもある様だ。

そして実質を重んじる鶴の湯の最大の特徴は風呂にある。
下町の小さな銭湯と侮るなかれ!
浴槽は全部で5種類もあり、なんとサウナ迄あるのだ。(別料金などと野暮は言わない)
残りの湯種は以下の通り、妖しい香りを放ち茶色く濁る薬膳風呂、微小な泡を混成させてまるでミルク風呂の様な色と湯感を実現しているシルキー風呂、水風呂、電気風呂、ラドン風呂だ。
訪れたのは開店後の2時過ぎだが引っ切り無しに親父たちが来店し盛況、かなりの人気店な筈。
3時くらいになると浴室内には軽く20人を超える男たちの姿が。。
尚、洗面器と椅子の他にボディーソープとリンス・イン・シャンプーのボトルが、各カランに備え付けられている。

立派な建物外観。。このエリアの人気店は何処も立派なそれを持っていることに後で気が付くこととなった

店舗内は多少混雑気味だが、入れ替わりが早く勝手の分かった客のマナーは良い。
不快さや不便さは全く感じない。
コロナ渦もあってか皆、黙浴に徹している。
私も、そんな快適さも相まって一時間程の長湯になってしまった。

私のお気に入りは薬膳風呂だ。
このセクションは独立した小部屋となっていて、他からは隔離されていて半野外となっている。
よって少しの安心感、静寂さ、それと漢方の香りに包まれて本当に心地良い。
これが東京下町の分厚く?未だ現存する地元庶民の銭湯文化なのか?
やるな!東京の下町よ。。中々なものだ。
尚更、下町の銭湯に興味が魅かれることとなり更に探求を続けよう胸に想いながら、鶴の湯を後にすることとなった。