新年明け既に8日が過ぎている。
クリスマス、年末寒波と続き、正月明け恒例の南岸低気圧による首都圏の降雪。
毎年、概ね繰り返される恒例行事みたいなものだ。

しかし、それとは対照的に人間社会ではこの2年間、何からナニまで異例づくめだ。
今迄、当たり前に行っていたことが全く出来ない。
元の日常など望むべくもない程、様変わりしてしまった。
変わらないのは気象現象位なものか?(昨今はそれすらも怪しいが。。)

2年前のパタヤでの大晦日。毎年の様に参戦を続けていた恒例の大晦日の乱痴気騒ぎ。もうこんな夜は二度と来ないのだろうか?

特に今週に入り、我が国でも新型コロナウイルス・オミクロン株による感染第6波が決定的になっている。
爆増の前週比12倍増ってなんだ?
しかも、在日米軍基地のある諸都市付近だけ。
これについて政府は沈黙を続けている。

空恐ろしい事に、自国民による正月の羽目外しの分はまだこれから。。
あの忌々しくもやりきれない外出制限が、近いうちに現実味を帯びそうな気もする。
年明け早々、正月気分に冷や水が浴びせかけられた感じでやれやれだ。

2020年当初、中国で始まったミステリアスな呼吸器感染症の西欧諸国への飛び火が明らかになり、欧州の各国が国境を閉ざし始めた頃。ある朝、突如始まったパタヤの繁華街の放水作戦。この後、期限不詳の娯楽施設の閉鎖命令が出されることに。水撒きホースで通りを放水かよ?? 今振り返るならそれはとんだお笑い種だよ。だが、その時は誰も何も判っていなかった。そう、誰もだ。我々自身の未来についても何も。。    画像は2020年3月20日付

例年、この時期の私は赤道の向こう側で水平線から上がる日の出を拝んでいる筈。
かれこれ、現地で20年近く続けているサーファーとしての本分で、その任務を毎朝全うしている筈なのだが。。

インド洋東端に位置する私のホームスポットでの日の出シーン。ほぼ、毎朝目にしてきた景色なのだが。。今となっては、それは手の届かないものとなってしまった

それが叶わないものとなり、今回で2回目の年越し。
やるせなさは募るばかり、不満を向ける矛先もない。
ずっと続けてきた早寝早起きをする理由も消え失せて久しい。。
それでもナントか気分を変えようと、何処かで御来光を拝んで観る事を想いついた。そして、元日の早朝に伊豆半島にある大室山に向ってみたので報告する。

本州中部に位置する静岡県、その東部にある伊豆半島。
首都圏からもアクセス手軽な言わずと知れた観光地だ。
伊豆半島東岸の主要都市伊東市にある標高580m程の独立峰が大室山。

綺麗な円錐形をした山体の頂上部に、ハッキリとしたすり鉢状の火口部の地形が残っている。火口底部は平らになっていて、まるでサッカースタジアムの様な地形だ

その大室山には登山リフトが敷設され、長きにわたり営業を続けている。
その登山リフトが元旦の早朝に特別営業をしていると聞きつけたのが事の次第。

:参考までに大室山登山リフトのHPはこちら

年越しをテレビの前で迎え、早朝のリフト営業開始の午前5時半に現場到着をしてみた。
列島は折しも年末寒波に覆われ、現場の気温は氷点下8度を指していた。
夜明け前の凍てつく外気にもかかわらず、現場には既に数百人のリフト待ちの行列が形成されていた。

正月早々、リフト待ちの行列に並ぶ羽目になるとは。。今から40年程前、当時アルペンスキーに打ち込んでいた時以来の正月の苦行に、時空を超えた懐かしさがこみ上げた

車のフロントガラスはもとより、路面にはうっすらと結氷がみえる。
手袋が無いと手指が非常に辛く、スマホの操作もままならない寒さ。
文句を言う自分の指先を自販機のホットコーヒーの余熱で何とかなだめすかしつつ待つこと半時間、なんとかチェアリフトの機上の人となる。

海側から山肌に吹き付ける容赦ない夜明け前の寒風に言葉も出ない。今から数十年前には山男だった私も十余年間に及ぶ東南アジアでの腑抜けた南国生活で、今ではすっかり骨抜きだ。軌道下にスマホが落ちていたのも見えた。写真でも撮ろうとし、手がかじかんでいて落としたらしい。余程寒かったに違いない。笑

寒さに震えながら10分程で山頂駅に到達。
当然、山頂は遮るものはなく吹き晒しもいいとこ。
そして本当の試練は此処からだった。
午前6時頃か? 辺りはまだ暗く、水平線が多少、色味を帯び始める程度。

手前に伊豆大島の灯火、青紫に染まる水平線上に三浦半島の影が見える。その向こうに房総半島を望み、2022年最初の太陽はそのあたりから昇ってくるはずだと、誰もが目星を付けていたのだが。。そう、その時までは。。

薄明の中、数百人が強風吹き付ける極寒の状況下で稜線沿いを歩き、自身の御来光スポットに陣取る。
私も人混みから離れたスポットを見つけて、初日の出を捕えようと持参したカメラをセットする。
しかし、薄手の手袋では保温が到底充分では無かったらしく、手は既に使い物にはならない。
ナントか三脚のセットまでは出来たものの、細々したカメラの設定などは諦める他なかった。

あまりの寒さと期待外れに終わった御来光条件により、途中で相当数の客が脱落し散って行った。そして最後まで戦い残った初日の出客は、まるで朝鮮戦争時の敗残兵の様に虚しく下山する他無かった

リフト運航会社の名誉の為に行っておく、元日特別営業をするにあたり、参拝客一人一人に携帯カイロと記念品を配ってくれてはいた。
このカイロにかなり救われたのは言うまでもない。
見ていて一番痛々しかったのは、ミニスカート姿だった綺麗なオネーさん。
途中で姿が見えなくなったので、同情を禁じ得なかった。

北へ目を向ければ、雲一つない空に映える綺麗な富士山が見えたことが、せめてもの救いだったような。。

手指に続き、とうに感覚を失くした爪先が次第に疼痛に疼きだす。
凍てつく地面に座り靴を脱いでカイロで爪先を温め始める女性をみて、私もそれに倣う。
それから待つこと50分か?
そこで太陽の上がる位置にちょうど雲がかかり、どう見ても御来光が見えないという状況が明らかになったのだ。
位置的にはちょうど、沖に浮かぶ大島の位置だ。
この時点で百人以上が来光を待つことなく、帰って行った。

苦行と徒労に終わった2022年の大室山での初日の出。寒さに耐えて残ったにもかかわらず、結局午前八時を過ぎても来光は射さず、敢え無く諦めることとなった。馬鹿馬鹿しい、もう絶対やらない!

結局、見えずじまいに終わった2022年元日の御来光。
やるせなさと虚しさだけが残る負け犬イベントになってしまった。
頭にあるのは早いトコ何処かの温泉にでも浸かる事だ。
気分を変える為にワザワザこんな山にまで来たのだが、まったく役に立たなかった。
なんだか不穏な気持ちが拭えない2022年の年明けに。
帰りのリフト乗り場で、抜け目なく売られていた甘酒と串団子の甘味だけがせめてもの慰みだった。

春の訪れを告げる毎年2月期に行われる大室山の山焼きも有名なイベントの一つで、700年の歴史があるという