タイ王国の首都バンコク。
ローカルはクルンテープと親しみを込めて呼ぶが。。
かつてバックパッカーの聖地と呼ばれたカオサンロードなどもあり、聞くところによると以前は安宿には事欠かなかったバンコク。
そして時は移り変わり、、いまでは日系を含む高級ホテルの出店ラッシュが続き、中ー高級宿泊施設が多く集積する。
市場規模や価格競争力が地域屈指にまで成長したのが、現在の国際観光都市バンコクの姿だ。

ほんの短い期間、目を離していたら世界ブランドのハイアットリージェンシーが目抜き通りのスクンビットに開業していた。Hyatt Regency Sukhumvit 2019年開業

各種ネットメディアなどの媒体にもバンコクハイエンドホテルの宿泊記が花盛りだ。
バンコクに限らずそれ等には公私共々、色々と背景があるのだろうが。。。
完全個人ステイタスの私から観れば、それはそれで羨ましいかぎりだ。。

そして到底、太刀打ちは不可能。。。
それなら出来ることは?と考え、対極のローエンド施設の探訪を想いついた。
しかし、私は海外放浪歴はそれなりに長いがバックパッカー出身ではなく、その経験もない。
ゴキブリが出る様な類の安宿や、共同シャワーやトイレなどの利用経験は無く、一泊千円以内などの予算制限をかけたことも無い。。
いきなり本格的なドクダミ荘宿泊などは少々、荷が重すぎるのでネット検索でしばし物色し吟味してみた。。

最近のドクダミ荘的宿泊記パタヤ・PSアパートメント宿泊記事はこちら

当り障りの無さそうな安宿を幾つか見つける。。
その中で小さいゴキブリ達と夜中にオXマの悲鳴が聞こえると言う、少々愉快そうなレビュー上のキーワードに私のアンテナが反応して、、

(大きいゴキブリは不可能だ!あくまでも小さければ行けそうだが、おぞましい事には変わりない)

見つけたのがこの物件、バンコク屈指のレッドライトディストリクトの一つ、スクンビット・ソイ4ナナにあるホワイト・オーキッド2だ。

かの有名な煩悩の巣窟ナナプラザにもほど近く、典型的な狭い路地の奥にある場末の安宿だ。

長年に渡り愛用している予約サイトのアゴダで見て見ると。。。
隣接するホワイト・オーキッド1と呼ばれる別館を含めて、常時怪しげな低価格を実現しているようだ。。

当物件をアゴダで見てみるとこちら

堅実にこのエリアでの下層価格を常にマークしている。
タクシーで乗り付けてみると。。暗く狭い路地の入口で降ろされ、、既に展開している怪しいマッサージの呼び込み嬢達を掻き分けながら奥へ進む。
普段なら足を踏み入れない怪しさ100%の路地奥に、目指すホワイトオーキッド2はあった。

ドアを開けて中へ入ると。。。
なるほど、いきなり受付カウンターにぶつかる。
写真を撮る様なものは何もなく、エントランス・スペースやホールもなく、辛うじて人ひとりが常駐出来そうな隙間があるだけ。
手早く書類を記入、予約個人情報を提示して鍵を受け取るだけ。
笑顔や応対、会話はなどは無く最低限の業務連絡で解放される。
しかし、ぶっきらぼうではなく悪い印象は無かったのが救いだ。
お互いに底辺クラスの施設利用者だという共通認識が成立しているのだろう。
余計な交流やおもてなしは必要ないと言う事か。。
エレベータなど有る訳は無く、上層階へは自身の足が頼りだ。
あてがわれた部屋は2階の109号室、建物エントランス受付の真上だ。
25㎏のスーツケースを持ち上げ階段を上がる。暗い廊下の両サイドに客室のドアが狭い間隔で配置されている。
各部屋は壁一枚で隔てられているようだ。
期待せずに自室のドアを開けると。。。
やはり狭い! アジア2万里史上最少の客室どころか、恐らく私の個人旅行史上最少でもあるだろう。
Agodaの表示では24㎡となっていたがそれは誤表示だろう。

一応、設備は整ってセットされてはいるが。。独房レベルの狭さと言え、長居は出来そうにない。

それでも機能している冷蔵庫、テレビ、机、ソファらしき物、クローゼットスペースもあるが、ただスーツケースを開けるスペースが見当たらない。

ベットは充分に固く遮光カーテンも所定の機能を有しており、取り敢えず寝る分には不自由は無いようだ。

バスルームの清潔度は及第点ギリギリ。構造上、窓は無く通気は想像の通り。意外なことにシャワーの水圧湯温とも悪くは無い

バスルームは広い筈は無く、人ひとりがやっとのレベル。
シャワーを使えば、洗面台やトイレットペーパーは勿論の事、客室までもがまんべんなくびしょ濡れになるので工夫が必要だ。バルコニースペースは有るにはあるが、、使う気には成らないレベルだ。
そして窓からは電線とシティービューが望める。

向かい合ったビルは安宿の改装工事が進行中なので勿論、漏れなくノイズがついてくる

他に電源アウトプットは2つがベットサイドにあり、デスク近辺にも必要数ある。
そして無料WIFIの感度速度とも意外な程良好、動画のアップロードも快適だったのが大きな救いだ。客室はこんなところだが、やはり小さなゴキブリの活動が視認できる。
あまり気持ちのいいものでは無い。
手早く荷解き、セットアップ、シャワーを浴びて外へ繰り出し、近所のパブに陣取り、泣く子も黙る歓楽街ソイ4ナナの夜を待つことにする。

ちょうどラグビーワールドカップ日本大会の試合が進行中。男どもの考えることは皆一緒。

彼らには何らかのボールゲームのテレビ中継とビールを与えておけばどの国の男どもでも大概は静かにしている。しかし、ビールを与えすぎるとしばし逆効果に陥るので注意を要する。

ビールをやりながら本格ナッチョスを摘まみ、通りを観察しながら夜を待つだけ、気楽で幸せなひとときだ。 付近には以前紹介した個人的のお気に入りシーシャスポットのDubai caféもあり、私はこのひたすら男どもの欲望に忠実なこのソイ4の有様に好感を覚える。
酒、飯、タバコ、X性、または元男性などを間断無く供給しようとする場所を好きでない男達などいるのだろうか?

スクンビット・ソイ4ナナ・のDubai caféの前記事はこちら

この時の私のソイ4での活動については、ここでは割愛するが務めを終えて帰宅してみると。。
やはりと言うか、、我が宿のホワイトオーキッド2には男性滞在者も居るには居るが、多くの客室はフリーランサーの根城兼仕事場と化しているようだ。
個人営業者と言っても色々あるだろうが、、安宿に棲息するからにはそれ相応のレベルなのは当然。
夜も更けて明らかになったのは私の部屋両隣の住人の素性。
片方はバリ島在住の栄光の元メジャーリーガ―新庄氏の様に、真っ白でパーフェクトの歯を持ったフィリピンからのトXンスジェンダー嬢。
もう一方にはアフリカナイジェリア出身のまるでブロンズの彫像のようにスレンダーに均整のとれた肢体を持つ黒人女性の二人組。

夜も更けるに従い、次第に私の部屋の両隣には人の動きが増えていく。
長身の黒人男性2人が徘徊しだした時には、部屋の鍵を閉める気になった。しかし、彼ら個人事業者もすべての操業を自身の根城で行う訳でもない様で、沿岸操業から近海、想像するに遠洋操業などもこなしているようだ。

そして無事就寝し、問題もなく翌朝を迎えることに。。
宿泊施設としての感想は、、路地に入っているので警戒はしていたのだが、夜を通し想った以上に静かだ。
そして歓楽街のど真ん中は朝から昼にかけても当然動きが少なく、静寂さは保たれる。
同じ路地の対面で進行する改装工事が無ければ静かと言っても良い環境だろう。

もう一つの懸念事項、客室内のゴキブリはやはり夜間に動きが活発。。
一晩で数匹を目撃することに。。
耳や口、または所持品に入られることを想うと怖さを感じざるを得ない。
そしてこのレベルの安宿だ、ハウスキーピングは頼まないと来てもらえないようだ。

最後に日中も遅くなってから活動を開始するもう片方の夜行性住民と話す機会があったのでそれについて少し。
彼らは国際操業に従事し、常に移動を繰り返しているという。
合法的に一箇所に長く滞在できないと言うのが一つ目の理由。
もう一つは非公式な操業者なので、年々厳しさを増す当局の監視の目から逃れる為らしい。
タフな状況に生きている彼らだ。
そして彼らの居住環境は今まで述べてきた通り。
この狭い独房に相棒と寝起きを共にすることも。。
まさにプリズンセルの様相。。
一時とは言え、同宿の輩として彼らの安全操業を願うばかりだ。

第一回のローエンド宿泊記としてはこんなところだが、これでも一泊あたり2千円前後。
現在、存在するのかどうかは不明だが、更に予算とレベルを落とせばもっと面白味のある宿泊体験をどこかで得られないのかもしれない。
しかし、私にその勇気があるかどうかも今のところ不明だ。
さらに考察をしてから、以後この試みの処遇を決めたいと想う。