3日間のスモールコンディションがようやく終わり、新しいウネリがバリ島に到達した今朝、ウェブカメラでは2-3ftに見えたので、午後の潮の上げ初めを狙うことにしてみた。現場到着午後3時過ぎ、既にこの日の最低潮位の時間に達している。
風速10m近い南西貿易風が吹き付ける6ftプラスってところか?
時折、割れるセットはもう少しありそうで見るからに力がある波だ。
幸い、セットの切れ目があるようで、セットの連続と小康状態が織り交ざっている。。
持ってきた板は、薄めのミドルセレクション、長めのショートボードで4-6ftの範囲内で使っている板だ。
ギリギリで快適ゾーンか、ちょっと足りない位と予想する。

日没以降のウルワツ、残照が暫く続いて引き続き波乗りは可能だが油断は禁物だ。バリ島の波乗りを侮ってはいけない。ただ、陸に戻ることも時に困難を極めることがある。日没時に急なトラブルなどが発生しようものなら、あっという間に海上で夜に叩き込まれてしまう。海上で夜を明かしたりとか、夜半過ぎに戻って来たとか、怖い体験談や武勇伝は枚挙に暇がない。中にはそれ程、幸運に恵まれなかった悲しいケースも多々ある。夕暮れ時に波が良くなるのは判るが、、明るいうちに余裕を持って上がる様にしたいものだ。でなければそれが人生最後の波にもなりかねないのだ。。

入水ポイントまで歩いている途上で、ビックウエーバーの知人JD氏が上って来るのにすれ違う。
どうした? 出てったばかりと訊いたが? 同時に沖に目をやると6ftのソコソコの落差だが、分厚いパワフルな波が怒涛の様に入ってくる。。

早い波をインサイド迄乗ってったのは良いが、、降りた途端にセットの連打を、通称外科医のテーブルで(サンゴ礁が棚状になった浅い箇所)浴びて首を痛めたという。

こんなサイズの波を果敢に攻めているJD氏なのだが。。先日の世界記録を持つギャレット・マクナマラ氏のケース同様に、小さめの波でも人体にとっての過酷さは許容範囲を超えると言うことだろう。

献身的なサーファーである彼は日頃の鍛錬も欠かさず、上半身には分厚い筋肉が盛り上がっているのだが。。
小さいながら強力な波だってことだ。後にチャートを見て納得の3600kj台。。当たり前だ!はは

暫く談笑してから意を決して入水、引き潮のせいであっという間に手術台の危険ゾーンまで流される。
最悪ゾーンに嵌り込む前に岸に引き返してやり直し。
2度目は出て行くタイミングを更に注意深く選び、ルートを替えて成功する。
呼吸も心臓もドキドキハアハアのスリリングな体験。。

沖に出て行ってみると総勢5名のそれなりのメンバー。
私は定位置のワイド沖狙いで待機に入る。。
小康状態が長く続き、ガッカリしかけたその時。。
沖に一本の黒い線が。。
高くないので青く見えず、横に長いので黒い線に見える。。
来たーのは良いけど、、横に全速で逃げないと大喰らい必至で、折角苦労して沖に出たのに岸まで吹っ飛ばされかねない感じ。
波乗りは時に酷く残酷な一面を見せることがある。

早めに察知し慌てて逃げたので、意外なことに行けそうなポジションに自分がいる事に気が付き、、角度を合わせ更に力を入れて漕ぎ行ってみた。。
首尾よくテイクオフに成功し、慎重に伸びるちゃんとしたボトムターンをしてから、上を見上げると目の前に夕陽が遮られた真っ黒な壁。。

おいー! 悪くない位置から捕って、ちゃんとしたボトムターンでドライブしてからこの位置に来ているのに何でこんな波の壁が盛り上がっているの?? しかも既にずっと先まで伸びていて、上部の波のリップは牙を剥いて私を見下ろしている。。
横に長いクライミングウオールを端から見上げている感じとでも言おうか?

あれーっと想い、慌てて作戦変更で小さめのトップターンをかまして波の中腹に留まり進行方向を波の先へ向けて空かさず加速作業に入る。。
そのまま崩れる波との追いかけっこで200m程走ってから遂に波に負けて最後は大音響とともに5ftほどの波が一気に崩れ咆哮が鳴り響き辺りは真っ白。
辛くもインパクトを外して飛び込むも、、ひっどくパワフルな巻かれかた。
そりゃそうだ、3600kjだものな。
水中でインパクトベストを着て来れば良かったと後悔。
幸運にも板にも海底にも当たらず、レッグロープも切れず、板もまだ無事っぽく、息も絶え絶え海面に顔を出すことが出来て、ホッとしながら注意深く最初の一息を吸い込み、同時に目を開けると、、更に大きい波が真上に!

そうか!これだったのか?JD氏が嵌り込んだのは!
要するに今日はちゃんとやっても乗り切れない速い波だってことだ。
毒づきながら思いっきり息を吸い込み、また深く潜りあとは祈るだけだ。
さっきのより大きいので、もっと酷くなるだろうと予想しながら。
案の定!危険な程水中で小突き回されて更に浅い方迄引っ張られ、危ないからもう止めにしようと一瞬、想ったほどだ。

幸運にも4発喰らったところで連打が終わり、何とか沖に戻ることが出来た。
息はゼイゼイ、血圧心拍は上昇で眩暈がするほど。。
休み明けの最初がこれじゃ少々キツイ洗礼だ。ははは。。

サーファーの間で知られている不文律がある。
決して最初のセットには行くべからず。。
その後に何が控えているかわからないからだ。。
合理的な考えだが。。
しかし、私個人はこれを信じていない。
むしろ反対の立場を執っている。
元来、波をずっと待っているのに、折角来た奴をみすみすスルーしろだと?
気は確かか?
次にもっと大きいの来ているかもしれない?
後ろに何発も来ているかも?
だからみんなでお手手つないで逃して次を待ちましょう?
それで次を捕り合うのか?

そんな女々しいことを大真面目に言ってるのか?
例え後ろに何が控えていようと、、来たものを無駄にせず全力で対峙して勝負し、後の派生事項は潔く受け入れるのがサーファーの本分ではないのか?

その結果がこれだが安堵と同時に動悸が収まれば非常に清々しい気持ちになる。
それから多少、注意深く波を選んで珍しく日没まで約2時間やった。
合計の波数は6-7本で私が一番だ。
そのうち一つはバレルインーアウトの突っ走りで、思わず声が出た満足の一本だった。
その分、打たれたのも多いがそれも本望だ。
予報によるとサイズが明日は上がるとも出ている。
やれやれ、どうなる事やら。。インパクトベストを持って望もう。