政府が、日常の市民生活の隅々まで関与するような厳しい規則が科せられているシンガポール共和国。
私も一時期、同地を頻繁に訪れて現地で遵守されている事細かな決まり事に驚嘆した覚えがある。
シンガポールでは、ガム、ゴミ、ペットにタバコ等、果てはトイレや蚊に関する事までと駄目な物には事欠かない。

しかし、表面上の街並みは非常に清潔に保たれて、治安上の統計も日本を超えると言われている。
外を歩いていても危険を感じる様なことは殆ど皆無だ。

シンガポール川辺に整備された屈指のエンタメスポットのクラークキー。元は海運交易の荷下ろし場が起源とされ、川沿いには同様にロバートソンキー、ボートキーと呼ばれるエリアが続く。かつては中継貿易、現在は国際的な自由貿易地として繁栄している

そのシンガポールでヤラかした哀れな外国人の顛末が国際的なメディアに載っていたので短く紹介する。

先月、ある若い英国人のグループがロックダウン中の飲み歩きがSNS上での騒ぎになり、当局から罰金9千シンガポールドルを課されたという。
同様に米国人カップルやオーストリア人のグループ、主に現地在住西洋人の摘発が相次いで発表されている。
その数は、5月1日から6月25日まで140人余りにのぼるとされている。
と此処まではCovid-19騒ぎの最中で、各地でよくあるロックダウン下の掟破りネタなのだが。。
このケースでは少々、結末が他より大変だ。
何故かと言うと相手は泣く子も黙るシンガポール当局。
事を構えるには如何せん、相手が悪い。

我々からすれば、些末で軽微な条例違反のように見えなくもない事例なのだが。。
メディア上には氏名や年齢等の個人情報は勿論、問題となった行動の概要までが結構、詳しくに出ている。
誰と誰がドコソコで偶然出くわし、誰が誰にビールを奢り、何を買いに行ってから、お喋りをしながら約45分間ほどの時間でビール3杯を呑んでと、、どうでも良い情報までもが詳しく載っている。
全ての登場人物の氏名や年齢を網羅する念の入れ様でだ。

更に悪いことに、アルコール販売や人の集まることも禁止されたロックダウン状況下、ローカルに対しては厳格な罰則規定があるのに、外国人はマスクも着用せずに自由にバーでビールを呑んでいるのかとソーシャルメディア上で炎上したとある。

これでは事は丸く収まる筈は無い。
結果、7名中6名が同国での労働許可を永久に取り消されるという極めて重い処分を課されたとある。

検察側は判事にあくまでも実刑を(この場合は数週間の収監)求刑したが、被告人に同国内での犯歴が他にないので罰金刑に処されることになったとある。
要するに事実上の国外追放処分。
入国管理は極めて厳格なシンガポールでは、職種、職歴に関わらず合法的に労働できなければ滞在もままならない。
出来てもせいぜい短期的な観光滞在が関の山。
そんな状況で働こうものなら、行きつく先は泣く子も黙る鞭打ちの刑!

要するに政府の決めた決まり事に違反すれば、厳しい罰則が科されるって事に尽きるのだ。
単純に決まり守れないなら出ていけか。。
女性の移民労働者に対しての妊娠検査まであるといわれている。
低熟練労働者が国内に無秩序に増えるのを避ける政策とされ、彼女らに妊娠が発覚すると即退場となる厳しい政策だ。
リークワンユー様よ! (シンガポールの初代首相、2015年没)
厳しい制裁や重篤な刑罰に怯えながら過ごす市民生活かよ!

シンガポールの鞭打ちの刑はこうして処されるらしい。たかが鞭打ちと侮るなかれ。大人でも3回で失神するほどの激痛だというが。。。冷汗

今から20年程前か?
現地のアメリカンスクールに通う米国人の少年が自動車や公共物の損壊の罪を問われた事件があった。
シンガポールの訴訟法によると、それらの罪状に対する刑罰はナント鞭打ちの刑。
マレー地方やアラブ地方では、特段珍しくもないが。
アジアに居住し、子息を値段の張るインター校などに通わせる上流西洋人家族にとっては、さぞかしの驚きと恐怖だったに違いない。
事は拗れにこじれて、合衆国政府をも巻き込んだ外交問題にまで発展しかけたのを覚えている。
西洋の社会通念からして鞭打ちの刑など前時代的で非人道的だとして、合衆国政府が刑の猶予を求めたもののシンガポール政府はそれを認めず、外交的配慮を見せて鞭打ちの回数が減らされたもの結局は刑が執行された。

世界中の注目が集まる中、シンガポール政府は決定を覆す様な事はせず毅然と自国の法律と体面の両方を見事に守ることに繋がった。
当時、唯一の超大国のアメリカ合衆国政府(クリントン政権下)の要請を突っぱね、自国の法体系とメンツを保った東洋の小国家シンガポールが魅せた気概に世界中が畏怖したのを覚えている。

話が大分逸れてしまったが最後に纏めると。。
私には国家としてのシンガポールは、アジア人として一見の価値が大有りだと信じている。

今から2,3年前には既に出入国の手続きが完全自動化されていた。 シンガポール・チャンギ国際空港は常に世界の最優秀空港に選出される常連

サイズ的には非常に小さい都市国家(東京都程の面積か?)
同時に我が国同様、天然資源を持たない非資源国。
人種は外見的に我々と大差がない華人が大半だが、マレー系やインド系もパッチワークのように混じり合う多人種混合国家だ。
しかも、あのアジア人的外見で公立校での使用言語は英語。
他に各出自により母語(華語、マレー語、タミル語)の使用が認められている。
そして、紛れもなく裕福な国で、サイズはともかく経済指標上は先進国と言える。

そんな小さな国のシンガポールだが、あの状況であそこまで繁栄しているのには何かワケがある筈だ。
マラッカ海峡を挟んだ対岸はインドネシアのスマトラ島。
距離的にみれば其処はそんなに離れていない目と鼻の先。
そこには未だに虎や象、世界最大の原始の花ラフレシアや海賊などが存在している原生林が拡がっている。
インターネットはおろか水道電気さえまだのところも多く、焼き畑農業による越境煙害の発生地でもある。

海の向こうではまだこんなモノが咲いているのだが。。スマトラ島で自生するラフレシア

それに対し、気候区分や地勢的にも殆ど同一のシンガポールはアジアの近未来を体現するような先進都市だ。
この差は一体?

無慈悲なくらい効率的な政府、高い教育レベル、厳格な法体系、非情な刑罰、そして安定した社会によるところが大きいだろう。
それこそ生前のシンガポール初代首相のリークワンユー氏が言っていた次の一言に尽きるのではないか?

「政府の統制が厳しすぎる開発独裁じゃないかという批判も甘んじて受けよう。。
我々には民主主義という贅沢にかまけている時間もスペースも無い。
その先にあるのは海峡だけ、他に行くところは無いのだ。。」

外国人だから? 知らなかった?では済まされない。
以前、タイ人のTS嬢の尻に太い一筋の傷跡があったのを見せられたこともあった。
オーバーステイだったらしく、彼らは性別規定にも厳格らしい事が判明した! 笑どっかの国のように、情状や金、一寸した根回しや便宜等の入る余地などは、これぽっちも無く、法律に関する限り彼らは至って冷酷だ。
それでも敢えてルールを破って、ちょっとしたお遊びに昂じたいのなら。。
海峡を挟んだ向こう側あたりでやった方が身の為だと想う。